このブログを読んでいる人なら、山中先生らがiPS細胞を樹立して8年、ヒトの体細胞からiPS細胞を完成させてから7年という短い時間で、網膜色素上皮細胞を移植する再生医療の臨床研究が神戸の最先端医療センターで行われたことは、各種メディアを通じてご存知であると思います。再生医療という新しい治療法が、これを機に多くの救われない患者さんのために役立つことを、薬学に携わる者として切に願っています。
日本においては、死生観の違いや文化的背景の違いから、欧米のように臓器提供が頻繁ではなく、また拒絶反応なども相まって、他家移植は難しい治療法です。欧米と言えども、需給のバランスは合わず、常にウェイティングリストが伸びています。日本だけでなく、宗教上の理由から自家移植以外に道の無い国々においても、iPS細胞を用いた移植は大きな希望を与えるものかも知れません。
この臨床研究の実施において、国が全面的にバックアップしていることは周知ですが、レギュラトリーサイエンスも大きく影響しています。いわゆる再生療法ができたことも、レギュラトリーサイエンスが寄与しています。
再生医療や細胞移植の有効性と安全性の確保・両立をどういう基準で行っていくのか、しっかり議論しつつ、遅滞のないように判断していかねばなりません。今回の革新的な臨床研究は、レギュラトリーサイエンスと言う学問領域の真価を試しているようにも感じました。