GRSのOG、Mさんが筆頭著者の論文が、Therapeutic Innovation & Regulatory Science誌にアクセプトされ掲載されました。
この研究は、医療経済評価等で用いるマルコフモデルを利用して、子宮頸がんワクチンであるHPVワクチンの総合的なベネフィットとリスクを定量評価し、シミュレーションによりベストケースシナリオを探索したものです。
ベネフィットはワクチン接種により予防できうる疾患による損失の逆数、リスクはワクチン接種にともなう副作用および予防できない疾患による損失とし、これらの総和によって定量評価しました。
その結果、2020年に9価HPVワクチンを10~29歳の女性に定期接種することによって、最もベネフィット・リスクバランスが良くなること、ワクチン接種による副作用により接種年齢層のリスクが一過性に高まることを明らかにしました。すなわち、接種後の被接種者モニターをしっかり施し、副作用に十分注意を払うことによって、将来にわたる子宮頸がんや関連疾患にともなうリスクを最小化できるのではないかと考えました。
折しも5年ほど審議されていた9価HPVワクチンが審議会を通過し、承認に向けた作業が始まったところ。全く副作用に無いワクチンは今のところありません。不幸な重篤な副作用を回避しつつ、適切にワクチンを利用して、皆さんや社会がより健康で幸福になれば、そう言った方向の政策判断の一助になれば研究者冥利に尽きます。
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