デンマーク研修学生レポート 第九弾
修士2年 森 大知
私は、2月26日にLeo Pharmaに訪問、2月27日にコペンハーゲン大学レギュラトリーサイエンス研究センター(CORS)、オランダの大学およびBioPeopleと合同フォーラム、2月28日、3月1日にBiopeople主催の国際フォーラムに参加しました。私がデンマーク研修に志願した理由は2つあります。1つ目は、シーズの探索から市販後まで幅広い開発段階での研究を拝見し、開発職として、非臨床から臨床までを視野に入れた開発計画を立案する際に活かしたいと考えたからです。2つ目は、英語でのコミュニケーションスキルを向上したいからです。私は将来、業務の1つに海外のベンチャー企業の方と医薬品のシーズについて契約交渉をする機会があります。そのような状況において、ベンチャー企業の方との信頼関係を築くには、英語でのコミュニケーションスキルが必要であるため、そのスキルを向上したいと考えました。これらの理由から、今回デンマーク研修に参加しました。
研修を通して新たに学んだことは3つあります。 1つ目はLEO Pharmaの訪問で企業の方から聞いた開発戦略についてです。LEO Pharmaは、開発する地域を大きくEU+、US、Internationalの3つに分けて事業展開しています。そのEU+の地域には、EUに加えて、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが含まれており、企業の方の話から、これら3カ国の薬事規制はEUに似ていることからEUに含まれていることを知りました。日米欧の3局の薬事規制については研究室のセミナーや研究活動を通して学んでいましたが、それ以外の地域についてはあまり詳しくなく、新たな知見が得られました。また、LEO Pharmaは、デンマークの企業であるため、承認申請の方法は、EUで行う方法とデンマークの規制当局で行う方法の2つがあることは事前学習で知っていました。年々EUで一括して承認を取得する方法が増えていることから、まずEUで承認することを目指すのだと考えていましたが、企業の方のお話から、EMAで承認を取るには高額な費用が必要であることや疾患の市場は国によって異なることから、まずEUでの承認を目指すという戦略ではなく、1品目ごとに薬事戦略を考えていることを初めて知りました。これらの知見は、今後開発職として働く私にとっては貴重なお話であり、海外で承認を目指す際に参考になると考えました。 2つ目は、グローバルでレギュラトリーサイエンスの研究をする難しさです。このことを他大学との合同フォーラムのワークショップの際に学びました。このワークショップでは、それぞれが実施した研究を聞いた後にグループで新たな研究テーマを考えます。疾患のメカニズムを解明する研究、薬事規制の影響を評価する研究、市販後の安全性の研究等、幅広い研究内容を拝見できました。またこのフォーラムで、私自身が知らない欧州やデンマークにある医薬品の安全性に関する施策(Periodic Safety Update Reports :PSUR、Direct Professional Healthcare Communication :DHPC)を知ることができました。新たな研究テーマを考える際、欧州にある医薬品情報についての文書であるSummaries of Product Characteristics(SMPC)は日本で言うとどんな文書にあたるのかとグループのメンバーに聞かれ、何も答えることが出来なく、悔しい思いをしました。しかし、それは欧州と日本で統一した文書がないことを意味していると考えます。グローバルで、提出する資料を統一することが、今後グローバルでレギュラトリーサイエンスの研究を進める鍵になると考えました。 3つ目は、Precision medicineについてです。大腸がん患者には多剤併用療法であるFOLFOXやFOLFOXILIが行われていますが、新たなバイオマーカーの発見によって、治療効果があるとされる患者はそのままFOLFOXやFOLFOXILIの治療を行い、そうでないとされる患者に対しては、治療を変えることでより精密な治療ができるとお話されていました。また、がん患者にとって深刻な問題である薬剤耐性に着目し、①薬剤耐性を持つがん患者の細胞を作成し、②その細胞のDNA配列、RNA配列、たんぱく質を分析したり、細胞に薬剤をスクリーニングしたりすることで、薬剤耐性のメカニズムを解明できるとお話されていました。今後さらにこのような研究が進むことで、抗癌剤治療以外の治療においてもPrecision medicineが進むと考えられるため、1開発者として、今後もさらにPrecision medicineに関する知識を吸収したいと考えました。
私は英語でのコミュニケーションスキルの向上も目指してこの研修に参加をしました。LEO Pharmaに訪問してお話を聞いた際は、積極的にわからないことを質問することができ、進んで英語を話す姿勢が身につきました。またLEO Pharmaでお話をされた方やBiopeopleの国際フォーラムで講演された方の話す内容を聞き取れる頻度が増え、発表内容を大体理解できたことはリスニング能力が向上していると考えます。しかし他大学との合同フォーラムでワークショップを行っている際、メンバーが何を言っているかわからなくて、議論に参加できない場面がありました。その際わからないことを曖昧にせず、わからないと発言していれば、自身も理解でき、議論も活性化したのではと考えます。質問はありますかと言われてから質問するだけでなく、議論の最中でも、タイミングを見計らってどんどん質問できるコミュニケーションのスキルを向上したいと思いました。
最後に大塚製薬株式会社様、三菱UFJ国際財団様の寄付によって、このような素晴らしい機会を与えていただき、誠に感謝しております。心より御礼申し上げます。
Daichi Mori
On February 26, 2018, we went to LEO Pharma and on February 27, 2018, Internal Symposium for Young Researchers in Regulatory Science was held in University of Copenhagen, Denmark and I performed oral presentation. On February 28, and March 1, 2018, International Conference on Perspectives in Precision Medicine was held in University of Copenhagen, Denmark. There were 3 things I learned in the delegates. One is the drug development strategy in Denmark. I have known that there are two main routes for authorising medicines: a centralised route and a national route, and the number of centralized route was gradually increasing, so I thought that pharmaceutical company at first chose the centralised route, but LEO pharma employee told us that centralized route was so expensive, and unmet needs were different between Europe countries, so pharmaceutical companies think each drug development strategy every time they apply for approval. Two is that it is difficult to do regulatory science research globally. When we attend the workshop program of Internal Symposium for Young Researchers in Regulatory Science, we must suggest new research theme with students in Denmark, Netherlands or Japan. In the discussion, Dutch student told us that in EU there was a document named Summaries of Product Characteristics (SMPC) which pharmaceutical companies inform medical doctors the information of medicines, and I thought the document was similar to package insert, but I didn’t know whether SMPC and package insert was same. In fact, Mr. Kikuchi taught me SMPC was almost same as package insert, but the document was not unified around the world. I thought that unifying the document around the world may be a key of facilitating the regulatory science research globally. Three is about precision medicine. In International Conference on Perspectives in Precision Medicine, I understood that it was important to detect the new biomarker of disease and mechanism of drug resistance to solve the challenge of precision medicine. It is also important to learn Precision medicine because precision medicine may reduce our health cost and give patients more effective or safer drug, so I would like to keep learning about precision medicine.
Finally, I would like to express sincere my gratitude to Otsuka pharmaceutical Co., Ltd and Mitsubishi UFJ Foundation for your effort.